「リファラル採用、始めたのに紹介が来ない」中小企業がやりがちな3つの丸投げ
「社員紹介の制度を作ったのに、半年間で紹介がゼロなんです」
採用のご相談を受けていると、こうした声を本当によく聞きます。紹介インセンティブを用意して、全社会議で「みんな、知り合いを紹介してね」と呼びかけた。それなのに、誰からも紹介が上がってこない。制度だけが宙に浮いている状態です。
先にお伝えしたいことがあります。紹介がゼロで終わる会社の多くは、社員に紹介する気がないわけではありません。「誰に・いつ・どう頼むか」という運用の設計を、まるごと社員任せにしてしまっているだけなのです。
リファラル採用は「制度を作れば動く仕組み」ではなく、会社側が"頼み方"を設計してはじめて回る仕組みです。
リファラル採用そのものは、もう珍しい手法ではありません。実施経験のある企業は調査によって幅がありますが、おおむね5〜6割にのぼります(矢野経済研究所の2025年調査で50.1%、TalentXの2025年調査で62.5%)。導入は一般化しました。差がつくのは、そこから先の運用です。
この記事では、私たちが現場で繰り返し目にしてきた「3つの丸投げ」と、その処方箋をお伝えします。
丸投げ1:「誰でもいいから紹介して」と、対象を社員に丸投げする
いちばん多いのがこれです。「知り合いで良い人がいたら紹介して」という頼み方。
一見ていねいなお願いに見えます。でも、頼まれた社員の頭の中では何が起きているでしょうか。「良い人……うちに合う人って、どんな人だっけ」「そもそも今、うちは何の職種を募集してるんだっけ」。考えるコストが高すぎて、結局その場では何も思い浮かばず、忘れてしまいます。
ある製造業の会社では、朝礼で「人手が足りないから紹介よろしく」と伝え続けて3ヶ月、紹介はゼロでした。ところが依頼の仕方を「前の職場で一緒だった人で、丁寧に仕事をする人を1人思い出してください」に変えたところ、その週のうちに2人の名前が挙がりました。
人は「良い人」では思い出せません。「あの人」という具体的な顔で思い出します。
処方箋:対象を会社側が絞り込んで手渡す
会社がやるべきは、募集を「誰に紹介してほしいか」まで翻訳することです。
- 職種と業務内容を1〜2行で言語化する(「経理の実務を1人でも回せる人」など)
- 「こういう人が合う」を性格や働き方のレベルまで具体化する
- 抽象的な「良い人」ではなく、「前職の同僚」「昔の後輩」と思い出す入口を指定する
この「思い出す入口」を渡すだけで、紹介数は目に見えて変わります。
丸投げ2:キックオフだけやって、タイミングを社員に丸投げする
制度を立ち上げた初日は、みんな盛り上がります。問題はそのあとです。
リファラル採用のいちばん多い失敗は、キックオフで一度告知しただけで、その後の声かけが途切れることです。社員は日々の業務に追われています。「いつか思い出したら紹介しよう」は、実務の中でまず起きません。悪気なく、忘れられていくだけです。
あるIT企業では、立ち上げ時に説明会まで開いたのに、2ヶ月後には誰も制度の存在を覚えていませんでした。担当者の方は「一度あれだけ説明したのに」と落ち込んでいました。でも、これは社員の問題ではありません。思い出すきっかけを、会社が用意しなかっただけです。
紹介は「盛り上がった熱量」ではなく「思い出す頻度」で決まります。
処方箋:思い出す接点を、会社のカレンダーに組み込む
タイミングを社員任せにせず、会社側が定期的に接点を作ります。
- 月に1回、「今募集しているのはこの職種です」と全社に共有する
- 求人票のリンクをそのまま送れる状態にして配る
- 新しい候補者像や採用の進捗を、短くていいので継続的に届ける
愛着や関心は、一度の説明では根づきません。繰り返し視界に入ることではじめて、「そういえば」という想起が生まれます。単発の告知を、継続の運用に変えることが肝心です。
丸投げ3:紹介したあとの対応を、紹介者に丸投げする
3つ目は見落とされがちですが、最も定着に効きます。
社員が勇気を出して知り合いを紹介してくれた。ところが、その後の連絡や日程調整をすべて紹介者本人に任せてしまう会社があります。「あとは君と友達の間で進めておいて」というかたちです。
紹介する側には、実は不安があります。「紹介してうまくいかなかったら、友人と気まずくなるのではないか」。この不安を放置したまま対応まで丸投げすると、社員は二度と紹介してくれません。1件の雑な対応が、その後の紹介の芽を全部摘んでしまいます。
紹介者がいちばん気にしているのは、インセンティブの額ではなく「紹介した友人が大切に扱われるか」です。
処方箋:候補者対応は会社が引き取り、紹介者には結果を返す
紹介が上がってきたら、その先は会社の仕事です。
- 連絡・日程調整・選考の進行は、担当者が責任を持って引き取る
- 選考の合否にかかわらず、紹介者へ丁寧にフィードバックを返す
- 見送りになった場合も、紹介者が気まずくならない伝え方を会社が担う
紹介した友人が丁寧に扱われた、という体験そのものが、次の紹介を呼びます。リファラル採用は、社員の会社への愛着があってはじめて回る手法です。その愛着を、雑な対応で削ってはいけません。
まとめ:制度ではなく「頼み方」を設計し直す
紹介が来ないリファラル採用に足りないのは、インセンティブでも制度でもありません。会社側の設計です。
- 誰に:抽象的な「良い人」ではなく、思い出せる具体像まで絞って手渡す
- いつ:社員任せにせず、思い出す接点を会社のカレンダーに組み込む
- どう:紹介後の対応は会社が引き取り、紹介者へ丁寧に結果を返す
どれも大きな予算はいりません。今週の全社連絡の一文を変えるところから始められます。まずは「良い人がいたら紹介して」を、「前職で丁寧に仕事をしていた人を1人思い出してください」に書き換えてみてください。それだけで、返ってくる反応が変わるはずです。
リファラル採用の"頼み方"設計から、伴走します
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