「10人採用して5人辞める」30〜99人の中小企業に起きている早期離職のリアル
「やっと採用できたのに、また辞めてしまった」
30〜99人規模の会社の経営者・人事の方から、いちばん重い声で聞くのがこの言葉です。求人にお金をかけて、面接に時間を割いて、ようやく入ってもらった。それなのに1年、2年で去っていく。採用の努力が、そのまま砂に水を撒くように消えていきます。
先に結論をお伝えします。早期離職の多くは、採用がうまくいっていないから起きるのではありません。「採る」ことに全力を注いだ分、「入ってからの90日間」がまるごと放置されているから起きます。だから中小企業がまず取り組むべきは、次の求人媒体を探すことではなく、採用の設計図の中に「定着」を最初から書き込むことです。
この記事では、公開統計で早期離職の実態を確認したうえで、30〜99人規模だからこそ起きる理由と、採用段階からできる打ち手をお伝えします。
「10人採用して5人辞める」は、大げさな話ではありません
まず数字から見ていきます。
厚生労働省が公表している「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」によると、大学卒の就職後3年以内の離職率は33.8%でした。おおよそ、3人に1人が3年以内に辞めている計算です。
ただ、これは全企業をならした平均値です。会社の規模で分けると、景色がまったく変わります。同じ調査の事業所規模別データがこちらです。
| 事業所規模 | 大卒3年以内離職率 |
|---|---|
| 1,000人以上 | 27.0% |
| 500〜999人 | 31.5% |
| 100〜499人 | 33.9% |
| 30〜99人 | 41.9% |
| 5〜29人 | 52.0% |
| 5人未満 | 57.5% |
30〜99人規模は41.9%。10人採用したら、そのうち4〜5人は3年以内に辞めていくという水準です。「10人採用して5人辞める」は、感覚的な誇張ではなく、統計が示している現実に近い数字です。
そして規模が小さくなるほど離職率は上がっていきます。5〜29人なら2人に1人。大企業の27.0%と比べると、中小企業は明らかに不利な戦いを強いられています。
なぜ30〜99人規模で、特に人が辞めていくのか
「うちの採用の見る目がないだけでは」と落ち込む必要はありません。この規模には、辞めやすくなる構造的な理由があります。
ひとつめは、入社後を担当する人がいないことです。
大企業には人事部があり、オンボーディング(受け入れ)の担当者がいて、研修プログラムが整っています。一方で30〜99人規模だと、採用担当者が総務も経理も兼ねていることが珍しくありません。採用というゴールにたどり着いた時点で力尽きてしまい、入社後のフォローまで手が回らないのです。
現場ではこんなことが起きています。入社初日、席とパソコンは用意されている。けれど「この人に何を教えるか」の段取りがない。忙しい先輩が「見て覚えて」と言ったきり自分の仕事に戻る。新人は一日中、誰に聞いていいかわからないまま座っている。この静かな放置が、入社後の数週間で何度も繰り返されます。
ふたつめは、採用のときに「良く見せすぎている」ことです。
中小企業は母集団が集まりにくい分、面接では魅力を伝えることに必死になります。それ自体は正しい努力です。ただ、良い面だけを強く打ち出しすぎると、入社後に「聞いていた話と違う」というギャップが生まれます。
Z世代は特に、選考プロセスの透明性を強く見ています。任される仕事の現実、忙しい時期の実態、キャリアの道筋。こうした情報が入社前に共有されていないと、最初の壁にぶつかった瞬間に「この会社は自分に嘘をついた」と受け取られてしまいます。
この2つが重なると、せっかく採った人が「歓迎もされず、話も違う」と感じ、静かに転職サイトを開き始めます。
採用の段階から、定着を設計する
ここからが本題です。定着は、入社後に慌てて始めるものではありません。採用のプロセスそのものに、あらかじめ組み込んでおくものです。
私たち株式会社アスナロは、この考え方を「愛着採用」と呼んでいます。ひとことで言えば、選考の過程で候補者に会社への愛着を育ててもらい、その熱量を入社後まで続かせる、という設計思想です。
ポイントは、愛着は一度の面接では生まれないということです。愛着のある場所や人の背景には、必ず「思い出」があります。それは1回2回で生まれるものではなく、繰り返しの接点で少しずつ積み上がっていくものです。だから採用でも、候補者との接点を「回数」と「質」で設計していきます。
具体的には、こんなことです。
- 面接を「品定めの場」ではなく「相互に発見がある場」にする。候補者自身も気づいていなかった強みを、面接官が言葉にして返す
- 良い面だけでなく、任せたい仕事の現実や会社が抱えている課題まで正直に共有する。「一緒に助けてほしい」と伝えることが、かえって当事者意識を生む
- 合否連絡にも一言フィードバックを添える。事務的な通知で終わらせない
こうして選考を通じて愛着が育っていると、入社後のギャップが小さくなります。「思っていた会社と違う」ではなく「やっぱりこの会社を選んでよかった」に変わっていきます。
そして忘れてはいけないのが、入社後の90日間です。ここで意図的に接点をつくることが、離職率を左右します。最初の1週間で何を教えるかを決めておく。週に一度でいいので上司との1on1を予定に固定する。小さな成功を一緒に喜ぶ。派手な制度は要りません。「あなたを気にかけている」という事実が繰り返し伝わることが、定着の土台になります。
採用にかけた予算と時間の何割かを、そのまま「入ってからの90日間」に振り分けること。これが、10人採って5人辞める会社と、5人採って4人残る会社を分けます。
まとめ
早期離職について、大切なところをもう一度整理します。
- 30〜99人規模の大卒3年以内離職率は41.9%。10人採れば4〜5人が3年以内に辞める水準
- 原因の多くは「採る力不足」ではなく、採用時のミスマッチと入社後90日間の放置
- 面接を発見の場にし、良い面だけでなく現実も正直に共有することでミスマッチは減らせる
- 採用予算と時間の一部を、意図的に入社後のフォローへ配分する
採用は、内定を出した瞬間がゴールではありません。その人が「ここで頑張ろう」と思い続けてくれて、初めて成功です。「採る力」と同じだけ「定着させる力」に目を向けていただけたらと思います。
「採用しても辞められてしまう」でお悩みの経営者・人事の方へ
株式会社アスナロでは、中小企業の採用を入り口から出口まで支える「フルサポ採用」を提供しています。求人設計や面接だけでなく、候補者に愛着を育ててもらう選考体験の設計、入社後の定着まで見据えた採用のかたちを一緒につくります。
「採る」で終わらない採用に切り替えたい方は、ぜひ一度ご相談ください。
👉 詳しくはこちら:https://note.com/asnalo_note
出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00010.html